人生 ああ鱈腹味わいたい

毒親疑惑の親が高齢になりまして・・・

江戸時代の毒親 by 浅田次郎

読売新聞朝刊に掲載中の時代小説

浅田次郎さんの「流人道中記」が面白い。

 

先月はじまりの第1話、まず「万延元年」と

いうのがわからず、グーグルさんのお世話になった。

1860年らしい。

 

江戸末期の物語だ。といって、今のところ

幕末の話は出てこない。主人公は江戸の

貧しい下級武士の青年だ。

時代背景や人物描写にぐいぐい引き込まれていく。

 

先日、主人公が自分の実家をこう述懐していた。

 

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「子が一人少なければ一尾ずつ一把で足りるに」

などと、飯を食いながら父は平気な顔で言った。

 

弟がやがて家に寄り付かなくなったのも、妹が

身持ちの悪い女になってしまったのも、貧乏の

せいではなく父のそうした性根のせいだと思う。

僕だって一日も早く婿養子の声がかかって、

こんな家とはさっさとおさらばしたいと思って

いたのだから。

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子供が一人少なかったら、朝食の目刺しが少な

くてすむ、食費が安くなっていい・・・

そういうことを子供の前で平気で口にする父親。

貧乏であることより、親の性格の方がずっと

子供に悪い影響を与えるということだ。

江戸時代にも毒親はいた。笑

 

そんな小説の本筋ではない些細な箇所が印象に

残ったのは、自分の中で共鳴するものがあったから。

父親のタイプは少し違うかもしれないが。

 

30年ほど前に、私が結婚して家を出たいと言った

時の父の言葉がよみがえった。

 

「小春が家を出るなら、ワシはもう生きている

意味がない。死んだ方がましだ。

お前だけが幸せになってはいけない。」

そう言って、父は車の中でこっそり泣いていた。

 

娘の独立を祝福しながらも寂しい・・・

いわゆる花嫁の父親の涙とは違うと思う。

 

自分の思い描く人生に娘が必要なのに、娘が

出ていくなんてショックだ。なんのために

これまで娘を育ててきたのかわからない。

そんな気持ちだったのだろう。

 

人の性格は言葉に出ると思う。

突然その時、父がそういう言葉を言ったのでは

なく、小さな頃からずーーーっと親のそういう

ネガティブな言葉の中で私は育ってきたのだ。

 

私も早く家を出たくてしかたがなかった。

Me, too!!!

でも、小説の主人公は次男なので家を出られたが

私は女ばかりの姉妹の長女で、出るにはハードルが

高かった。

江戸時代でもないのにどうして?って信じられない

だろうが、私の育った家はそうだったのだ。

 

そして、そんな30年以上前に言われた言葉にまだ

こだわっているのかと自分に腹がたつ。

家を出て親との距離ができてからは、そんな言葉は

忘れていた。ところがこの数年、親が高齢になり

頻繁に実家に行くようになり、距離が近くなった。

そして親が30年前と全く変わっていないことに気づく。

 

「ワシはもうダメだー。

そのうちどこかで倒れてるぞ。

孤独死してるぞ。」

 

最近そんな言葉がたびたび父の口から出る。

私に実家に戻って同居してほしいのだ。

 

高齢の一人暮らし、寂しいのはわかる。

でも、そういうネガティブな言葉を聞くたびに

しんどくて息が苦しくなり、心がズキズキ痛む。

 

傷つくんだよ。

親のそういう言葉に子供は傷つくんだよ。