人生 ああ鱈腹味わいたい

毒親疑惑の親が高齢になりまして・・・

謎の思い出、嘘のような思い出

小学校低学年の頃の記憶だ。

母と二人で親戚のうちに行った。

母にとって気安い親戚ではなかったので

少し緊張していたように感じてはいた。

 

そこでおばさんが手作りのサンドイッチを

出してくれた。大きなお皿に綺麗に並んだ

美味しそうなサンドイッチ、そんなの見た

ことも食べたこともなくて本当に嬉しかった。

 

ワクワクして食べようとすると

母が小さな声で、でもハッキリと言った。

「食べちゃダメよ!」

私はがっかりして下を向くだけだった。

どうしてダメなの?と聞き返すことも

食べたいと言うこともできなかった。

 

そうして母と2人で気まずく時間が流れた。

なぜか部屋の中に2人だけだったのだ。

しばらくして、おばさんが部屋に戻って来て

手付かずのままのサンドイッチを見ると

どうぞ遠慮しないで召し上がってねと

言って、また部屋を出て行った。

 

おばさんの言葉に嬉しくなって、手をのば

すと、また母が「食べちゃダメ!」と

言うのだ。

 

覚えているのはそこまで。

食べた記憶はないので、きっと食べないまま

そのおうちを辞したのではないかと思う。

 

なぜ? どうしてだろうとずっと疑問に

思いながら、とうとう母に聞けないまま

だった。

母は他界し、クエスチョンマークだけが

私の心に残っている。

 

まさか毒が入ってたわけでもないし

母が遠慮していたのだろうか・・・

おばさんの気持ちになってみたら、食べて

もらおうとせっかく作ったのに、手付かず

のままなのは悲しかっただろう。

 

 

もうひとつ食べ物のことで残念な記憶が

ある。やはり小学生の頃だった。

 

近所の親子が何組か集まって、食事会の

ようなものがあった。一人づつお膳が

並べられていた。

その中にロースハムが1枚並んでいた。

普段の家の食事では安いハムしか食べて

なかったので、私は最後に食べようと

大切にお皿の横に残しておいた。

 

突然、隣に座っていた母が

「あら、小春はこのハム嫌いなのね」

と言って、パクッと食べてしまったのだ。

あ!・・・と言う間もなかった。

 

私がそのハムが嫌いで残していると勘違い

して、そのまま残すのはもったいない

から食べたのだろう。

 

食事の最後の楽しみにとっておいたハムを

母に食べられて、ガッカリだった。

悲しかった。

 

自分の好きなものを最初に食べる人もいれば

最後に食べる人もいる。

たったそれだけのことだが・・・

 

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今思うに・・・

たしかに母の行動は謎だ。

 

でも、もっと謎なのは小春だ。

「どうして食べちゃいけないの?」

「とっても美味しそう、食べたいよー!」

とか、どうして言わない?

子供だったら素直に無邪気に、そんな風に

言うのではないのだろうか。

 

2つ目の思い出だって

そんなことされたら、泣いて抗議したって

いいはず。

「小春が最後に食べようと残しておいた

ハムを、お母さんが勝手に食べたーーー!」と。

 

これは、私が子供を育ててわかったことだ。

10歳くらいまでの子供なら、自分の感情は

素直にストレートに出す。

 

私はそういう子供ではなかったようだ。