その夜に感じたこと
母が亡くなった。
実家の仏壇の前に安置された母の棺の
そばに布団を敷いて私は2晩寝た。
お線香の匂いが部屋に漂い、とても静かだ。
横になると、不思議な感覚に襲われた。
最初は胸のあたりをヒモのようなもので
ぐるぐる巻かれているみたいで息苦しかった。
すぐに、そのヒモがするするとほどけていって
どこかに消えていった。
フーッと息をするのが楽になり軽くなった。
ああ、解放されたと感じた。
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葬儀でもほとんど涙は出なかった。
悲しいのかどうかも自分ではわからなかった。
私は冷たい人間なんだろうか。
10年ほど前に飼っていたペットが亡くなった
ときは、何日も涙が止まらなかった。
ただただ悲しかった。
ペットの写真を見ながら、心の中で話が
できるようになるまでに半年はかかった。
それを思い出すと、私にとって母はどういう
存在だったのだろうとわからなくなる。
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(追記)
読売新聞の「人生案内」を毎日読んでいる。
読者からの様々な悩みを相談員が回答する
コーナーだ。
私が相談者の立場だったらどうするだろう。
回答者の立場だったらどう回答するだろう。
そんなことを考えながら読む。
何人かいる回答者の中でも、最相葉月さんが
好きだ。言葉は辛いけれど、切り口が新鮮と
いうか読んでいて心に心地よい風が吹くこと
が多い。最相さんが回答した相談を集めた
「辛口サイショー」という本まで買って
しまった。
そんな最相さんが、以前書かれていて印象に
残っていることがある。とても涙もろくて
ドラマや映画を観て涙が止まらなくなる
ことが多いそうなのだが、お母さんが亡く
なられたときは、涙が出なかったそうだ。
そのわけはなんだろう。
ぜひお聞きしてみたいと思った。